講談社 野間清治と創業物語【2】
時は日露戦争後。明治維新後の急速な西洋化を経て“大国”ロシアに戦争で勝ち、世界列強の仲間入りをしたと沸き返る時代である。志を持つ学生たちが、政局を唱え世論を喚起するためあちこちで「演説会」を開催し、一般民衆がその弁舌を聞きに押しかけていた。
市井の人々が聞くことのできる立ち会い演説会はどこも満員だというのに、大学での講演は、内部の学生だけに聞かせるべきものと考えられており、一般には公開されない……若き清治は、緑会設立演説会の速記を作りながらひそかにこう考えていたのだ。