親鸞
幼名を忠範(ただのり)という。9歳で出家し、名を範宴(はんねん)と改める。比叡山で20年、過酷な修行に挑むが、29歳で山を下りた。法然門下に入り、名を綽空(しゃくくう)とする。門下ではすぐに頭角を現し、師に認められて善信(ぜんしん)と改名。しかし、35歳のとき、念仏弾圧で一門が断罪され、自身も流罪を科されて親鸞を名乗った。
河原坊浄寛(かわらぼうじょうかん)
元武者で、いまは鴨川の河原の聖(ひじり)。幼い親鸞の窮地を救い、「われら、石つぶてのごとき者たちの兄弟だ」と教えて、東国へ去っていく。
ツブテの弥七(やしち)
白河印地の党の頭。ツブテ打ちの名手で、後白河法皇の諜者ともなる。そのツブテにはさまざまな技があり、強力かつ精密な武器となって、親鸞を幾たびも救い出す。
法螺房弁才(ほうらぼうべんさい)
元比叡山の行者で、弁舌巧みな巷の聖(ひじり)。ことに医方に通じて、六角堂の境内に施療所を開き、貧しい人たちを治療する。親鸞に「聖の無戒」を教える。
玉虫(たまむし)
旅先の大和路で出会った、謎の傀儡女(くぐつめ)。19歳の親鸞に心を許し、身を投げ出す。別れて10年の間ひたすら親鸞を思い続け、再会を果たすが……。
紫野(しの)
六角堂で出会った不思議な美女。越後出身で関白・九条兼実に仕える三善家の養女となった。親鸞は、一目会ったときから思いを寄せるが、重い労咳を患う彼女とは別れなければならなかった。
伏見平四郎(ふしみへいしろう)
美しき、残酷無類の怪少年。平清盛が組織する六波羅童のリーダー。幼い親鸞を世話する日野家の召使い・犬丸を拉致して、浄寛、弥七、法螺房らと戦うが……。
犬丸
日野家に仕える、正体不明の召使い。下人の子として生まれ、日野家に買われて名字を許される。昼と夜、二つの顔を持ちながら、親鸞を気遣い、なにくれと世話を焼く。
サヨ
犬丸の妻で、愛情豊かなしっかり者。幼くして両親を失った親鸞にとって、母を思わせる女性だった。長じて親鸞の女性問題を叱りとばすひとコマも。
法然
悩み続けた親鸞が、ついに出会った生涯の師。15歳で比叡山に上り、「知恵第一」と讃えられながら、隠遁生活を送る。43歳で専修念仏の教えに目覚め、比叡山を下りた。
安楽房遵西(あんらくぼうじゅんさい)
念仏での世直しを謀る美青年。法然門下では、親鸞の兄弟子にあたり、美貌と美声で名高い僧。
鹿野(かの)
紫野の妹。越後育ちの快活な娘。姉の看病をしながら親鸞のことを聞かされて、ほのかな恋心を抱く。
良禅(りょうぜん)
比叡山での同僚。危うい美少年。兄弟子の親鸞を慕うが、のちに慈円に仕えて、比叡山の若き実力者となる。
慈円(じえん)
寺門、権門をあやつる政教の黒幕。時の関白の弟にして、延暦寺で4度座主を務める実力者。9歳の親鸞が出家した際の戒師であり、親鸞の実力に期待する。
後白河法皇(ごしらかわほうおう)
今様(いまよう)で世を治めんとする「暗愚(あんぐ)の王」。
伏見平四郎に因縁をもつ。1191年、暁闇の法会を企画し、仏前の大歌合わせを催す。歌声を評価された19歳の親鸞も出場した。1192年に没する。
親鸞
三十五歳のときに念仏禁制(ねんぶつきんぜい)の裁きで都を追放され、越後に流罪となる。役についたのち、関東に招かれ、土地の人々に教えを説いた。
恵信(えしん)
親鸞の妻。親鸞と京都で出会ったときは紫乃(しの)と名乗っていた。親鸞が流罪となってからも行動をともにした。
外道院金剛(げどういんこんごう)
生き仏を称する、並はずれた法力の持ち主。穢れを恐れず、多くの民の支持を集める。越後の河原に住んで一大勢力を築く。
早耳の長次(はやみみのちょうじ)
外道院のいる河原に出入りする流れ者。親鸞に近づき、一番弟子を自任した。
彦山房玄海(ひこさんぼうげんかい)
外道院の懐刀。陰の軍師といわれるほどの知恵者で、外道院に心酔する。
荻原年景(おぎわらとしかげ)
越後の国の郡司。守護代に対抗して、河川の利権で外道院と手を組む。
六角数馬(ろくかくかずま)
荻原年景の腹心の部下で、実務を仕切る。親鸞たちの監視兼世話役になった。
戸倉兵衛(とくらひょうえ)
越後の国の守護代。国司や郡司の力をそぎ、さらに外道院の持つ河川水利の略奪をもくろむ。
サト
神がかりした娘。守護代の館に捕らわれていたところを、親鸞らに救われた。名香房宗元(みょうこうぼうそげん) 外道院に仕える白覆面の男で、河原の弁慶と呼ばれるほどの剛の者。
鉄杖(てつじょう)
守護代の館から逃げ出した下人。親鸞の家に上がりこみ、弟子入りした。
小野(おの)
行方知れずとなった、恵信の妹・鹿野が残した娘。京から恵信がひきとったが、母を捜しに京へ戻った。
戸倉貞次郎(とくらていじろう)
守護代・兵衛の次男。父に不満を持ち、一泡ふかせる機会をうかがう。
法螺房弁才(ほうらぼうべんさい)
親鸞が幼少のころに知り合った聖(ひじり)。親鸞が開いた施療所を手伝う。
良信・明信(よしのぶ・あきのぶ)
親鸞の長男と次男。良信は、都で犬麻呂夫婦に育てられることに。
葛山犬麻呂(くずやまいぬまろ)
親鸞の伯父の家に仕えていた下人。犬丸(いぬまる)と名乗っていた。親鸞と別れてから独立し、都で商人(あきんど)に。
香原崎浄寛(かわらざききよじろ)
鴨の河原では河原坊浄寛と称していたが、関東で有力な御家人になる。
性信房普済(しょうしんぼうふさい)
鹿島神宮の神官にして武士。親鸞一家を関東まで案内する役に。その後、弟子となる。
宇都宮頼綱(うつのみやよりつな)
下野(しもつけ)の国と常陸(ひたち)の国・笠間の領主。親鸞を関東に招くことを熱望する。塩谷朝業(しおやともなり) 宇都宮頼綱の長弟。ゆえあって宇都宮家の総領を譲り受ける。
稲田頼重(いなだよりしげ)
頼綱の末弟。稲田の領主で、後に親鸞から頼重房の名をもらう。
弁円(べんねん)
親鸞の命を狙った土地の修験者。弟子となり明法房に。
真仏(しんぶつ)
下野の高田に道場を持つ、名の知れた念仏者。
黒面法師(こくめんほうし)
平家の組織・六波羅童(ろっぱらわっぱ)の頭領だったが、悪行の限りを尽くす奇怪な修験者に。
ツブテの弥七(やしち)
ツブテ打ちの名手。親鸞が幼いころに知り合った白河印地党の頭(かしら)。
當間御前(たいまごぜん)
親鸞が旅先で出会った傀儡女(くぐつめ)で、玉虫と名乗っていた。今様(いまよう)の歌い手になったが、死んだはずになっていた。