講談社BOOK倶楽部

南部芸能事務所 畑野智美

『南部芸能事務所』

「お前とじゃなきゃ、ダメなんだよぅ」

弱小プロダクションの芸人たちを、誰も書けない筆致で紡ぐ連作短編集!

笑われてもいい。いつか笑わせられるなら。

たまたま親友に誘われ、そのバイト先の先輩が所属する「南部芸能事務所」のライブを見に行くことになった新城(20歳)。たちまち魅了され、その夜のうちに芸人を志す。とはいえピンでは無理、コンビの相方が必要だ。先輩の「ものまね女芸人」津田ちゃん(25歳)は、事務所スタッフの溝口(20歳)と組むといいと言うのだが……。

『南部芸能事務所』
著者:畑野智美
定価:本体1,400円(税別)

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 20代の後半はずっと「小説家になりたい」とだけ考えて、日々生活をしていた。アルバイトをして、新人賞に投稿する小説を書き、本を読む。その繰り返しで、友人とは連絡を取らなくなった。遊んでいる時間がなかったというのもあるが、いい年して夢を追っていることを恥ずかしく感じ、批判される気がしていた。「小説家になれるはずがない」とも思っていた。諦めた時、かっこ悪く思われない言い訳を探した。新人賞をいただき、小説家になったのは31歳の時だ。  久しぶりに会った友人は「すごく心配だった」と話し、本が出たことを喜んでくれた。かっこ悪く思われたくないと考えていた自分のかっこ悪さに気づかされた。  夢を追うことは、素晴らしいことです。苦しいことです。そして、夢を諦めることは惨めなことではありません。『南部芸能事務所』が誰かの背中を押す一冊になることを願っています。

講談社「リブラリアンの書架」7月号 畑野智美さんインタビュー

畑野智美

1979年、東京都生まれ。2010年、『国道沿いのファミレス』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2013年刊行の3作目『海の見える街』は吉川英治文学新人賞候補になる。他著に『夏のバスプール』がある。

書店員さんからの反響続々!

  • 面白い! ハタノ!!
    青年、女子高生から壮年晩年、どの視線からも地に足ついた感覚、リアルで瑞々しい。
    すごい! 人物の一人一人にぐっと引き込まれました。職業・性別・立場は違えど、悩み・不安の感覚が共感するところが多かったです。もっとハタノ作品読みたくなりました、面白かったです。

    SHIBUYA TSUTAYA 内山はるか様

  • 舞台は弱小芸能事務所。お笑い芸人が所属する事務所だけあって社長をはじめとして、さすがに個性的なメンメンが揃っている。それぞれにドラマがあるから面白くないワケ…ない!? いや、頭から面白い人たちの話と思ってはいけなかった。芸人の世界は厳しい。人を笑わせるために実は悩み、もがき、時には途方に暮れる時もある…。そんな普通の顔の芸人たちを大御所から売れっこ、新人まで巧みに書きわけ(時にはファンの女の子も交えて)まるごと“南部芸能事務所”。“笑わせる”ために一生懸命な人たちを暖かい目で描いて、前向きなラストに私の気持ちも明るくなりました。

    平安堂 長野店 町田佳代子様

  • 個性豊かな、愛すべき南部芸能事務所の芸人たち。彼らが売れっ子になる日はくるのか? と心配してしまう(笑)
    一番グッときたのは「クリスマスツリー」保子師匠が素敵! モデルは内海桂子さんでしょうか? 亭主に恋をする九十歳…。うらやましい。あとは新城くんが思わぬ才能を発揮していることにびっくり! お笑い芸人を目指すなんて、ぜったい無謀だと思ったのになあ。

    紀伊國屋書店 横浜店 川俣めぐみ様

  • 各章ごとにそれぞれの視点で語られているので、同じ舞台でもまったく違った印象を受けました。みんなを応援したくなって、元気が出てくる作品でした。

    三省堂書店 京都駅店 安達仁美様

  • 1話目の「コンビ」から、もうハタノマジックに魅せられましたー。めっちゃ好きです!! 何者にもなれないと思っている新城の「芸人になりたい」という夢に出会えた時の描き方や、芸人同士のカップルのすれ違い(セックスのすれ違い?)がリアルすぎて好きで、3人組の中でのふつうの中野の将来への不安と焦りが切実で、お笑いファンの女子高生が少しずつ大人に近づく中で、お笑いの話ができる同年代の友達を作りたいともがく姿は微笑ましくて、ひと花咲かせた若手芸人の心の闇に、芸能界という世界の過酷さを感じ、大御所の波瀾万丈な人生と芸への執念、亭主との平穏な家庭の動と静の気持ちにしみじみとさせられ、新城の相方・溝口の漫才への熱い熱い気持ちが夢へと向かう中で盛り上がっていく、売れている芸人になりたいという決意が清々しく、幸せな気持ちで、読み終えた後も次は自分の人生の何かが始まるような、そんな感じがしてならなかった。小説の中では、彼ら彼女らの夢は芸人になること、続けていくこと、売れることでしたが、その夢を自分の夢に置きかえてみたら、自分ももっと夢のために頑張れるんじゃないかと思えました。主人公として取り上げられる人たちが様々で、どんな人たちもそれぞれの葛藤と向き合い、生きている。その姿にすごく元気をもらえました。

    ブックファースト 梅田2階店 岸田安見様

  • 自分の夢を追う、とか格好いい。そりゃわたしだって言ってみたい。でも、将来や学校や家族や、そして自分に自信が持てなくてふらふらしてしまう。迷う。それぞれひとりでは迷い、折れてしまいそうだけど、事務所が、先輩後輩が、そして相方がいたからこそ立っていられる。そのカッコよさ、というかカッコ悪さ…とうか、そのどっちでもないかもしれないけど、前に進もうとあがいている姿がなんだかじーんと胸に残りました。ひとりじゃないからこそめんどくさいし、進まないし、イライラするけど、ひとりじゃないからこそ誰かを支えられる。そんなことを感じました。

    紀伊國屋書店 横浜みなとみらい店 安田有希様

  • 芸能事務所=ギラギラした話なのかと思っていましたが、そこはやっぱり畑野さん。等身大の焦燥が描かれていて、胸がヒリヒリ痛みました。支え合いながら競い合う彼ら。感謝と嫉妬が共存する、複雑な感情が手にとるよう伝わってきました。
    ひとりひとりのキャラクターがいとおしくて、どこかで生き続けて、いつか夢をかなえてほしいと思わずにはいられませんでした。南部社長視点のお話も読んでみたいです!

    紀伊國屋書店 新宿本店 今井麻夕美様

  • これは最高です! 前3作は正直、もう少し入りこめないところもあったのですが、本作はまさに文才ぶりを大いに発揮しましたね。
    第1章は「これはよくある成長物語だな」と思わせられましたが、その後の構成と展開は予想をぶっ飛ばすような迫力に大満足。なんとか店で大応援していきたいです!

    MARUZEN&ジュンク堂 梅田店 中野優子様

  • みんな芸人のくせに不器用で無駄に繊細で悩みすぎなんだよ! ちっとも笑えないよ! でもまあ、放っておけないから応援はしてあげてもかまわないかな…。

    明正堂 NTT上野店 金杉由美様