『時の審廷』
著者:芦辺拓
定価:本体1,600円(税別)
盤石の地位を保ってきた政権党から第二党への初めての政権交代なるかが注目された総選挙の投開票日に、大地震発生の報が。同日、弁護士兼探偵の森江春策に「日本分断」と告げる謎の電話があった。
一方、昭和24年。大量殺人事件・大都銀行事件の取材にいそしむ仮名文字新聞記者の和智雄平にも、戦前に赴任したハルビンの知人から「日本分断」という電話が――。
『時の審廷』
著者:芦辺拓
定価:本体1,600円(税別)
盤石の地位を保ってきた政権党から第二党への初めての政権交代なるかが注目された総選挙の投開票日に、大地震発生の報が。同日、弁護士兼探偵の森江春策に「日本分断」と告げる謎の電話があった。
一方、昭和24年。大量殺人事件・大都銀行事件の取材にいそしむ仮名文字新聞記者の和智雄平にも、戦前に赴任したハルビンの知人から「日本分断」という電話が――。
私の長編25作目となる本書は、本格ミステリでありポリティカル・フィクションでありメロドラマであり、伝奇時代小説でもあるという作品です。
髷物でもないのに時代小説?と訝られるかもしれません。でも、奔放な想像力で江戸期をとらえた伝奇小説が栄えた昭和初期は、明治維新から約六十年過ぎたばかり。下って山田風太郎氏の明治ものがスタートした1973年は、明治が終わった61年後でした。
ならば――敗戦からまもなく70年になろうとする今、もう戦前戦後の激動期を伝奇ロマンとして描いていい時期がきたのではないか。そんな思いで書いた『時の審廷』は、だからまさしく伝奇時代小説であり、でもやっぱり本格ミステリなのです。
その意味でも『時の誘拐』『時の密室』と、常に現状打破と新たな挑戦を課してきた“時”シリーズ12年ぶりの新作にふさわしい内容になったと思います。どうかご一読を!
「本格ミステリ・ベスト10」第2位、「週刊文春ミステリーベスト10」第8位に選ばれた傑作ミステリ『時の密室』から12年。久々の「時」シリーズ復活です! 『時の誘拐』『時の密室』の舞台は大阪でしたが、本作は主に東京、そして戦前のハルビンで物語が繰り広げられます。過去の事件と現在の出来事が交錯し、多重構造で描かれている点は、これまで2作と同様ですが、「日本分断」「政権交代選挙」など、スケールはより壮大に、謎も深遠になっています。そして、時を超えたロマンスも……。「時」シリーズの集大成とも言える大傑作ミステリです!