三軒茶屋にひっそりと佇むプラネタリウム。
店主・和真のもとに、10年ぶりに双子の弟・創馬が帰ってきた。娘だという美少女・月子を連れて。
娘1人にお父さんが2人。奇妙な共同生活が始まった……。
夏が訪れ、星座館にさらに騒々しい面々がやってくる。
”親子3人”の暮らしに乱入する、和真に恋する謎の美女。
そして、家族の秘密の鍵を握る存在が、哀しくも大切な過去を、少しずつひもといていく。
夏の星座の物語は「恋」と「友情」――どこまでも熱く激しく、愛しい。
読めば心躍る、人生讃歌エンタメ小説!
『夏のキグナス 三軒茶屋星座館』
著者:柴崎竜人
定価:本体1,300円(税別)
自分の星座の物語を知ってますか? ゼウスやオリオン、ヘラクレスといった名前は聞いたことがあっても、ギリシャ神話については? 星座館で和真が語るのは、よそでは聞けないその超訳。「千里の道も悪意から」女王・ヘラ、「三度の飯より美女が好き」全天一のトラブルメーカー・ゼウス、など。神といっても、実は彼らはバカで、不器用で、欲深い、どうしようもなく人間くさい存在なのです。はるか昔から語り継がれてきた人の心は、今となにひとつ変わっていない。だから、星座館を訪れる客たちの悩みと重なり合い、新しい物語が生まれるのです。和馬は現代と神話を結ぶ語り部なのです。
星座館では、別々に育った双子の兄弟(兄・和真、弟・創馬)と、血のつながりのない娘・月子がともに暮らします。”親子3人”の奇妙な共同生活には、水商売の女性やオカマ、孤独な老人、親と不仲の高校生などが集う。血のつながりとは異なる、いわば疑似家族としての関係性が生まれていきます。ひとつの場所を軸に、悩みや不安、夢と感動を分かち合う。どちらの絆がより深いのでしょうか?
渋谷から二駅。都会でありながら、昔ながらの店や建物が昭和の面影を残す。今と昔が混在する街、それが三軒茶屋。大通りから一歩入れば小さな路地があり、迷路のような異空間が広がる。物語には、街に実在するキャロットタワー、TSUTAYA、穴場の銭湯やバッティングセンターなどが登場し、ガイドのような楽しみも。その風景を思い浮かべながら読み進め、また、読み終えてから三軒茶屋の街を訪れるという新たな味わい方もできます。知っていれば納得、知らなければ必ず行きたくなる、そんな街が舞台です。 三軒茶屋の書店、TSUTAYAと文教堂では「文芸書ランキング」1ヵ月連続1位を記録し、現在もTOP10入りを果たしています!
「この十二の試練はヘラクレスの上司であるエウリュテウス王、通称エったんが発注した仕事だった。でも彼の目的は『ヘラクレスを殺すこと』だったから、すべてが命がけのとんでもないミッションなんだ。さて、エッたんが課した二つ目の難業が、『レルネの沼に住んでいるヒドラを退治してこい』というものだった。
ヒドラっていうのはね、まぁ簡単に言うと猛毒を持つ蛇の怪物だよ。あまりに巨大だし、凶暴だし、ふつうに考えたら到底人間が倒せる相手じゃないんだ。エったんは本気でヘラクレスに死んで欲しかったんだね。
『ヒドラ退治とか、もうこれぜったい無理ゲーじゃんよー』
かなりギリギリのところで第一の難業の獅子退治をクリアしていたヘラクレスは、次の相手がヒドラだときいてふて腐れちゃったんだ。もし倒せなかったら、モテないどころか即死だからね。というか、死んだらモテないからね。ひとりじゃ無理だと思ったヘラクレスは『これ、お前も手伝ってくんね?』と甥のイオラオスを巻き込むことにした」
「ヘラクレスの甥?」とこんどは若い女の客が首を捻る。
「そう。詳しくはヘラクレス座のときにも話したんだけど、ヘラクレスには双子の弟がいたんだ。イオラオスはその弟の息子ってわけ。
イオラオスは後輩キャラで、学生時代から上下関係に弱い男だった。
しかもミーハーだから、しょっちゅうメディアに取りあげられてる英雄のヘラクレス叔父さんを大尊敬してる。だから彼なら断らないだろうと思ったんだね。
『ヒドラって言ってもただの蛇だから、チョチョって感じでさ、マジ頼むわ! もし倒したらお前も有名になっちゃうなー、それこそ英雄デビューだなー、叔父と甥っ子でベストジーニストをダブル受賞とか、マジ熱じゃね?』
『マジ熱っす! 激ヤバっす!』
とイオラオスはもうすでに記者会見のことで頭がいっぱいになった。
『ヘラ兄ィ、あざっす! 声をかけて頂いて嬉しいっす! この命、好きに使ってやってください!』
なんて、お調子者の甥っ子は景気よく返事する」……以下つづく (第3章 蟹座より)
――柴崎竜人です。
――東京都世田谷区の豪徳寺です。
――あなたと一緒に仕事してるはずなんですが……
――銀行員、バーテンダー、香水も作ってました。
――小説が好きでした。
――20年近く住んでいる大好きな街だったので。
――都心の田舎。
――あったらいいなと思う。
――実在します。
――しなかったら今あなた何やってるんすか。
――いきなりすか。出し汁です。
――好戦的な羊。
――さそり座。
――オリオン座です。
――いいけど、その質問いる?
――好きですよ。
――決めにかかってますね。
――女王ヘラ以外であれば。
――よく見るとそうでもないです。
――ちょっと待て。
――またいきなり……ありがとうございます。
――すごく嬉しいです。
――読みやすさはつねに意識して書いていました。
――担当編集っぽくなってきましたね。
――ギリシャ神話の面白さを伝えられればと思っています。
--わかった。お前ちょっと三茶来い。
--この質問を終わらせることです。
ご回答ありがとうございました!
日経新聞☆☆☆☆ 「目利きが選ぶ今週の3冊」
文芸評論家 北上次郎さん
人が物語を味わう理由を教えてくれる、物語。生涯かけて読み返したい!
吉田大助さん/ライター
大好きな人へリボンをかけてプレゼントしたい。そんな小説でした♡
まつゆう*さん/クリエイター・ブロガー
淋しさが募る夜にはこの物語を開こうと思う。今年のベスト級の小説!!
松本大介さん/さわや書店フェザン店
人との出会い、絆、そして家族、人生に大事なものを思い出させてくれる。笑って涙して心温まるエンターテインメント!
内山はるかさん/SHIBUYA TSUTAYA
満天の星の下、人間くさいダメな神々の話を聴いていると、悩み事なんかどーでもよくなってくる。きっと。
金杉由美さん/明正堂NTT上野店
うわあっ……すごくいい! ”好き”にも”家族”にもいろいろな形があって、かけがえのない存在になっていく。人生って、素晴らしい!!
佐伯敦子さん/有隣堂厚木店
嬉しいこと、泣きたいことがあった時、三軒茶屋星座館に行こう!
辻 香月さん/大垣書店イオンモールKYOTO店
読み終えて思わず空を見上げてしまった。その先にはきっと夢と希望がある。
内田 剛さん/三省堂書店営業本部
泣けました。心がしみじみと温かくなりました。
竹腰香里さん/丸善名古屋栄店
みんなに会いたい! と登場人物に引き込まれるような本でした。
安田有希さん/紀伊國屋書店横浜みなとみらい店
和真の語るギリシャ神話にグッと引き込まれ、神々の人間くささにフフッと笑ってしまう。
小出愛美さん/三省堂書店京都店
ラストシーンは読むだけでとても幸せな気分になりました。
石本秀一さん/ジュンク堂書店ロフト名古屋店