直木賞受賞第一作!
ルーズヴェルト・ゲーム
池井戸潤
廃部寸前――創部以来の危機に陥った青島製作所野球部は「奇跡の逆転劇(ルビ・ルーズヴェルト・ゲーム)」を見せられるのか!?
ライバル社の策謀に立ち向かう男たちの熱い闘いが始まる!
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監督に見捨てられ、主力選手をも失ったかつての名門、青島製作所野球部。
創部以来の危機に、野球部長の三上が招いたのは、挫折を経験したひとりの男だった。
一方、社長に抜擢されて間もない細川は、折しもの不況に立ち向かうため、聖域なきリストラを命じる。野球部の存続をめぐって、社長の細川や幹部たちが苦悩するなか、青島製作所の開発力と技術力に目をつけたライバル企業・ミツワ電器が「合併」を提案してくる。青島製作所は、そして野球部は、この難局をどう乗り切るのか?
人生を賭した男達の戦いがここに始まる。
『ルーズヴェルト・ゲーム』
著者:池井戸潤
定価:本体1,600円(税別)
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つまらん時代になってきたなあ。
世の中の景気はいつまでたってもパッとせず、「リストラ」なんて言葉はバブル崩壊後に突如出現し、いまや子供でも知っているお馴染みだ。
会社からも世の中からも、ムダのレッテルが貼られたものは次々と削られていき、ムダだけ削っていたつもりが、知らぬうちに余裕まで削られてしまった気がする。
だけど、カネを生まないのがムダなのか。ムダはホントにダメなのか。
本書のテーマは、社会人野球だ。たしかに、会社が野球部なんか持ってたところで、利益を考えればいいことはあまりないだろう。野球部に限らず、企業スポーツはいまの世の中からどんどん削られていく「ムダ」の最たるものだと思う。
だけど、ムダから生まれる余裕もあるんじゃないかな。余裕もムダもない社会は魅力的ですか?
ぼくは余裕もムダもある社会のほうが好きだな。
社会全体が遊びのないハンドルになってしまったら、つまらない。ほんの少しのムダでいいから、そこに置いておく余裕が欲しい。削れるけど削らない余裕というか。そんなところに、人としての、また社会としての懐を感じてしまう。
(小説現代 2012年3月号)