[幕末という時代]実在人物である主人公の生涯を忠実に追い、幕末の複雑な時勢や事件を曲げることなく織り込みながらも、著者独自の発見や着想を元に、まったくオリジナルな物語を生み出した。
[恋]この時代には珍しい商家の娘と地方藩士の大恋愛。しかし、思いを遂げた後にも、二人の仲には、どうしようもない障害が幾度となく立ちふさがり、離ればなれに。
[女たちの再生]物語の舞台は幕末から明治。女性の自立が難しい時代に、主人公も、その母までも、力強く自分の生きる道を切り拓いていく。これは闘う女性の生き方小説でもある。
明治の歌塾「萩の舎」で樋口一葉の姉弟子に当たる三宅花圃が目にした手記には、師である中島歌子の心の声が刻まれていた。人気歌塾の主宰者として一世を風靡し多くの浮き名を流した歌子は何を思い、胸に秘めていたのか。中島歌子は、幕末の江戸で熱烈な恋を成就させ、天狗党の志士に嫁いで水戸へ下った。だが、尊皇攘夷の急先鋒だった天狗党はやがて暴走する。内乱の激化にともない、歌子は夫と引き離され、自らも投獄され、過酷な運命に翻弄されることになる。
“君にこそ恋しきふしは習ひつれ さらば忘るることもをしへよ”代表歌に込められたあまりにも切ない真情。そして、歌子が下したある決断とは──。
『恋歌』
著者:朝井まかて
定価:本体 1,600円(税別)
朝井まかて(あさい・まかて)
1959年、大阪生まれ。2008年、第3回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞してデビュー。受賞作は『花競べ 向嶋なずな屋繁盛記』と改題され、講談社文庫に収録されている。人の心の機微に触れる細やかな筆遣いと一筋縄ではいかない話しの運びで、時代小説に新風を吹き込み、注目を集めている。『恋歌』で2013年、本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞(「オール讀物」12月号)し、直木賞受賞。他の著書に、江戸の庭師一家の奮闘を描く『ちゃんちゃら』、大坂の青物問屋を舞台に浪華男と江戸娘が恋と仕事の火花を散らす『すかたん』、女三人組のお伊勢詣り珍道中を活写する『ぬけまいる』などがある。謀反人の家族は投獄、斬首。幕末の人間模様が、こんなにもすごいものだとは思いませんでした。そして、人を愛することの過酷さを知り、登世(歌子)の生き方に心を打たれました。本当に“強い”恋愛小説でした。(有隣堂・厚木店/佐伯敦子さん)
さすがは注目作家。意表をつく構成の妙もさることながら、凜とした気品を放つ筆力に感じ入った。幕末の動乱期を生き抜いた女性の運命の悲哀が、深く確かな余韻を残す。まぎれもなく「いま、読んでおきたい」一冊だ。(三省堂書店・営業本部/内田剛さん)
わずか31文字に秘められた深い情念。運命の過酷さと、豊かな愛に彩られた主人公の生涯に目も眩む思いでした。(明正堂・NTT上野店/金杉由美さん)
じっくり小説を味わいたい夜に絶品の一冊。(MARUZEN&ジュンク堂書店・梅田店/中村優子さん)
終盤明らかになる事実が胸をうつ、時代小説としても恋愛小説としても「間違いなく面白い本!」とおすすめしたい傑作です。朝井さんの代表作になると思います。(紀伊國屋書店・新宿本店/小出和代さん)
一途な想いで激動の世を生き抜いた女の見事な姿に惚れました。(ブックファースト・新宿店/田浦靖子さん)
恋が成就した時には、その部分を何度も読み返して喜びました。藩士が尊王攘夷に突き進んでいく様に、何度心の中で引き止めたかわかりません。私はいつしか登場人物のそばにいました。(福岡県・20代・女性)
涙が止まりませんでした。胸が痛くなりました。今、好きな人と一緒に暮らせるありがたさが身にしみました。(北海道・40代・女性)
壮絶な過去をおくびにも出さず、命をかけて歌を詠む。そんな登世に憧憬の念を覚えずにはいられませんでした。(岐阜県・50代・女性)
作者は本当に幕末の水戸で生きていたんじゃないかと錯覚するくらいの臨場感。そして、読後も長くじわじわと感動できる力作です。(奈良県・30代・女性)
尊王攘夷の急先鋒でありながら、維新の波の中で切り捨てられた水戸藩の側から、それも天狗党の妻たちの側から描かれた小説は寡聞にして知らなかった。(岡山県・50代・男性)
恋しさと対になった憎しみ。そのふたつをひとつにするための「鎮魂」を考えた歌子。なんて強い女性。なんて劇的な人生なんだろう。(兵庫県・40代・女性)
和歌がこんなに悲しくも美しいものだと初めて知りました。命懸けの想いが込められた「恋歌」、なんて素敵な物語でしょう。(滋賀県・20代・女性)
男たちが始めた戦争に、女子どもが巻き込まれていく。31文字に秘めた壮絶な想いが、とても大きく感じます。(兵庫県・30代・女性)
本書に描かれる水戸藩の騒動は歴史の一コマとしての知識しかなかったが、誰もが筋を通した生き方を貫いていて感動的である。(神奈川県・40代・男性)
時代小説は不得手でしたが、読みやすい文体で良かったです。読後、背筋を伸ばして毎日を大切に生きようと思いました。(茨城県・50代・女性)