講談社BOOK倶楽部

おはなしして子ちゃん 藤野可織

『おはなしして子ちゃん』藤野可織

芥川賞受賞後第一作!ポップ&ダークな小説集

キュートで不気味、残酷だけど愛しい、恐るべき才能が炸裂する10篇の「おはなし」

「おはなしして子ちゃん」
小学校の理科準備室に閉じ込められた私。ホルマリン漬けの瓶に入った“あの子”が、「お話をして。ずっとひとりぼっちだったの」と一晩中、お話をせがんできて──
「ピエタとトランジ」
ピエタのクラスに黒髪の転校生トランジがやって来た。「私の近くにいるとみんなろくな目に遭わない」というトランジの言葉を裏付けるように、学校で次々に殺人や事故が起きて……!?
「エイプリル・フール」
14歳の夏、高熱を出した少女エイプリルは、後遺症で一日に一回嘘をつかなければ死ぬ体になってしまった。美人のエイプリルを守るため、町の人々は様々な犠牲を払うが……

収録作品

  • 「おはなしして子ちゃん」
  • 「ピエタとトランジ」
  • 「アイデンティティ」
  • 「今日の心霊」
  • 「美人は気合い」
  • 「エイプリル・フール」
  • 「逃げろ!」
  • 「ホームパーティーはこれから」
  • 「ハイパーリアリズム点描画派の挑戦」
  • 「ある遅読症患者の手記」

『おはなしして子ちゃん』
著者:藤野可織
定価:本体1,300円(税別)
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著者メッセージ

小説は武器だと思っています。
衣食住にひとまず問題がなくても、生き残っていくためにはおはなしが必要です。それは単純に他人とおしゃべりをし合うことであったり、なんらかの出来事や現象を理解するためにひとまとまりのおはなしをあつらえることであったり、おはなしと一口に言ってもいろいろな形がありますが、なかでも小説はたいへん便利な実用品です。


表題作「おはなしして子ちゃん」には、おはなしをしてもらうとどんどん元気になって力が湧いて来る女の子(仮)が出て来ます。その子がどうなっちゃうかは別として、本書に収録されている10篇が、この世界に無数にあるさまざまなおはなしと共に、あなたを強くするのに役立ちますように。

藤野可織 特別エッセイ
「おはなしして子ちゃんのこと」(「本」2013年10月号)

藤野可織(ふじの・かおり)

1980年京都市生まれ。同志社大学大学院美学および芸術学専攻博士課程前期修了。2006年「いやしい鳥」で第103回文學界新人賞、2013年「爪と目」で第149回芥川龍之介賞受賞。著書に『いやしい鳥』『パトロネ』『爪と目』がある。

読者モニターの皆様から興奮、堪能の声が届いています!

【30代/女性/神奈川県】
本全体の印象としては、『黒地のキャンバスに描いた大小様々カラフルな水玉模様』。ポップとダーク、コミカルとシリアス、読みやすいけど読み応えあり……。相反する印象がうまい具合に混ざっていると思いました。今まで短篇というと物足りなさを感じていましたが、一つ一つの話がぎゅうっと凝縮されていて、10冊の長篇を読んだような読後感でした。
【60代/男性/兵庫県】
残酷と狡猾さ、優しさ、命より絵を描くことを選ぶ情熱など人間の本質を、あたかもプリズムで分けるように分解し、ホラー、SF、美術の切り口で織りなした珠玉の短篇集である。これらのジャンルが好きな読者には、お薦めの1冊です。
【20代/女性/神奈川県】
無邪気で残酷で、だけど、なんだかとってもかわいい物語の数々。奇妙な設定の話ばかりなのに、どれも妙にリアルで、ちょっとゾッとさせられてみたり。想像力豊かな、独特の世界観を堪能させてもらいました。
【30代/女性/東京都】
現実から5mm浮いている、そんな不思議な話がたくさん詰まっていた。当たり前の日常が気付かないうちに当たり前のそれじゃなくなったり、当たり前みたいに展開される日常の土台が全然当たり前じゃなかったり。現実世界とお話の世界は間違いなく違うのに一部がリンクしてしまうから、だから突飛な設定のお話も妙に寄り添って読み進めてしまった。
【60代/男性/神奈川県】
怖いけれども可愛い。恐ろしいけれどもキラキラ輝いている。そして恐怖は湿り気がないので青空のような透明感を感じる。
この本は走るのが遅く、読むことも遅い友人に薦めます。
【20代/女性/東京都】
可愛いながらもぞくっとする怖さに驚きました。ポップな感じで綴られているのですが、自分の中にある異なるものへの恐怖を引き出されるような、不思議な感じがします。
一人の作家が違う恐怖を10本も書けるなんて凄いです。全部違って全部いいですね。
【10代/女性/神奈川県】
ちょっと怖いけど(ちょっとどころじゃない作品もありますが)、すっごく面白かったです! 作品の魅力は、胸がスカッとしたり、ウジウジ悩んでいたこともどうでもよくなっちゃうような作品の展開だと思います!
【20代/女性/神奈川県】
生き生きとしたキャラクターたちの魅力に問答無用で捕まりました。しかしこの本を読み進めていくと、個々のお話が、違う世界観で練り上げられていることにも気付かされます。
どの作品もワン・アンド・オンリーの素晴らしい短篇集でした。
【50代/女性/栃木県】
「おはなしして子ちゃん」、インパクトがあり、しかもかわいらしい題名だと思いました。でも、かわいらしいと思ったのは見事に期待を裏切られました。こ、こわーいって思いながら、話に引き込まれてしまいました。ホラー、サスペンス、SF、色々なジャンルのものがてんこ盛りな短篇集でした。10本の話が、実際に有り得ない話と思いながら、でも、もしかしたら有り得るかもと思わせる内容でした。人の暗黒面をこれほど明るく面白くさりげなく書けることに驚きです。
【50代/男性/山梨県】
この短篇集は現在の小説には未来、将来がない、と思っているかつての小説好きに薦めたいと思います、「小説的な世界には限界があると思っているだろうが、こんな本もある、黙って読んでみてくれ」と一声そえて。

書店員の皆様から応援の声が届いています!

【SHIBUYA TSUTAYA 内山はるかさん】
可愛さと不気味さの融合は心地よく脳内に浸透し、ファンタジーの世界へ私を誘います。まるでお伽噺、絵本を読んでいるような気持ちになりました。
【パルコブックセンター吉祥寺店 木幡宏美さん】
特に好きなのは「ピエタとトランジ」。トランジの周りで事件が起こるのはトランジの何かが、周りの人の欲望とかエゴとかを刺激するからだと私は思います。自分がピエタやトランジくらいの時、自由だけどあまり群れない高校生活だったので、トランジみたいな相方をみつけたピエタをうらやましく思いました。たとえ周りが全滅しても。
【紀伊國屋書店新宿南店 佐貫聡美さん】
藤野可織という作家を今まで知らなかった事を後悔した位、素晴らしい作品でした。 全編ユーモアと企みに満ちた意欲作で、まさに“お話”の魅力を存分に味あわせてくれます!
【三省堂書店営業本部 内田剛さん】
なんというアイディアの豊富さ! 引き出しの多さ! クールでシュールでミステリアス。様々な手法で生々しい人間の本質そのものを描ききった筆力の確かさに思わずはっと息を飲んだ。著者の底知れぬ可能性と希有な才能の一端を思う存分に堪能できる作品集だ。軽い気持ちで読みはじめると、きっと火傷します……覚悟の上どうぞ手にして下さい。
【大垣書店イオンモールKYOTO店 辻香月さん】
ものすごく贅沢本。見事に藤野可織の魅力がぎっしりと詰まっている。というかもう詰まりすぎていて、どうにかなってしまいそうです。ホラーではどこか冷たい視線に藤野さんのことがこわくなるし、SFではなんとなく漂うおかしさがあるし、これは本当におもしろい。一篇読むごとに作者にふり回される感じでまさに読書の悦楽でした。