講談社BOOK倶楽部

鶏が鳴く 波多野陸

鶏が鳴く 波多野陸

表紙

装画 平沢下戸

かつてのバンド仲間で引きこもり中の健吾は毎週月曜日の深夜、入荷したての少年ジャンプを買いに、コンビニに現れるという。なんとなく健吾が気に入らない(のに気になる)伸太は、健吾がコンビニにはいるのを確認して留守宅に侵入する。ところが深夜にもかかわらず、健吾宅からは奇声が響き渡っていた。健吾の部屋には聖書や洋書が置いてある。伸太は、帰ってきた健吾と夜通し話し合うことになるのだが……。

『鶏が鳴く』
著者:波多野陸
定価:本体1,300円(税別)
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波多野陸 Q&A

小説を書き始めたのはいつ、どのようなきっかけでですか?

A.
小説は去年の1月ぐらいから書き始めました。色々と本を読んできて自分の中に蓄積された知識等を小説という形でまとめられるのではと思いました。

群像新人文学賞に応募しようと思ったきっかけは何ですか?

A.
本当のことをいうと、応募にこの賞が時期的にぴったりだったという理由ですが、当然名だたる作家達が輩出している賞であることは知っていたので、そのことも関係しているはずです。

受賞作を書いたきっかけ、この題材を選んだ理由を教えてください。

A.
宗教や信仰というトピックに首を突っ込んでいますが、それはたぶん、私がそういうものと接点がないから逆に興味があったということでしょう。

どういう時間に執筆していますか? どんなときにアイディアが浮かびますか?

A.
書く気になれたら書きます。煙草を吸っている時にアイディアが浮かぶことも多いですが、一番はまさに小説を書いている時です。

好きな本(小説、評論)、好きな書き手(作家、評論家)を教えてください。

A.
J・D・サリンジャー、ジョン・スタインベック、高村薫、村上龍。

これから群像新人文学賞に応募する人へメッセージをお願いいたします。

A.
自分がある程度読めるぐらいの外国語の本に挑戦してみるといいかもしれません。私はそれで言葉に意識的になったような気がします。

著者から読者のみなさんへ

どうも『鶏が鳴く』著者の波多野陸です。デビュー作です。

この作品ではとにかく自分が面白いと思うことを詰め込みました。物語が持つことのできるシリアスさ、ユーモア、不可解さ、開放感、感動などなど、それらが混然一体となったものを書きたいと思ったからです。今、書いていた当時を振り返ると、ほとんどその〈詰め込んだ〉という感覚のみが蘇ります。

ただ、僕自身、そういった試みから生まれたこの作品がある種の幼稚さを持っていることを否定しません。そうなったのは、主人公が高校生であるという内容の問題もあるでしょう。しかし、それ以上に、学問がどんどん分化した結果、各々が極度に専門化しているのと同じように、おそらく今、小説の世界というのも専門化が進んで洗練されきった状態で、そんな中、専門的になりたくない(もしくはそうなれないほど頭のよくない)僕および僕の作品は端的に幼稚と見なされる、というのが本当のところだと思います。

くどくどと書いてしまいました。読んでくれるだけで存外の喜び! と言いたいだけなのですが、本当に口が減らないですねえ・・・。ちなみに『鶏が鳴く』の主人公二人の口の減らなさは僕の五十倍ぐらいです! お楽しみに!

著者写真

波多野陸(はたの・りく)

1990年、千葉県生まれ。
上智大学文学部卒。本作で第56回群像新人文学賞受賞。