プロの小説家が小説を書くにあたって一番意識するのは〈読者〉である。――と書くと「何をいまさら」と鼻白む向きもあるかもしれないが、これが案外難しい。第一に、読んでもらって、はじめて読者である。当たり前のことだが、読んでもらえなければ読者ではない。 いったいどんな人がこの作品を読んでくれるのか? 年齢も性別も職業も、場合によっては国籍も人種も異なる未知の読者の反応を懸命に想像しながら、一文字一文字、手探 りで書き進めていく。それが小説家の仕事であって、何度やっても難しいものです。 というわけで、柳広司にとって二十二冊目の著作となる本書『ナイト&シャドウ』も、とことん読者にこだわって書き上げました。満足のいく仕上がりになったと自負しています。どうぞ存分にお楽しみ下さい。
知力、体力、先読み能力——すべてが一級のエリートSP・首藤武紀(しゅとうたけのり)は、合衆国シークレットサービスで“異例の研修”を受けることに。初日、銃規制を求めるデモに遭遇した首藤は、突如暴れ出した男を瞬く間に制圧し、人質の少女を助ける。しかしその現場には、大統領暗殺計画を示唆する二枚の写真が残されていた。