講談社BOOK倶楽部

幻想郵便局 堀川アサコ

幻想郵便局 堀川アサコ

表紙

就職浪人中のアズサは、「なりたいものになればいい」と親から言われてきたけれど、なりたいものってなんだかわからない。そんなときに、特技欄に“探し物”と書いて提出していた履歴書のおかげでアルバイトが決定。職場は山の上の不思議な郵便局。そこで次々と不思議な人々に出会う。

オリジナルのものから改稿し、さらにグレードアップ! 生きることの意味をユーモラスに教えてくれる癒し小説。

『幻想郵便局』
著者:堀川アサコ
定価:本体581円(税別)

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「大丈夫だよ、がんばれ、わたし」と云って書いてました 堀川アサコ

『幻想郵便局』を書き始めたのは、専業作家になりたてで、不安だらけの時期でした。

日本ファンタジーノベル大賞優秀賞をいただいて「会社員兼作家」となってから、三年後のことです。勤務していた会社がツブレて、いやがうえにも人生の岐路に立ってしまったわけです。専業の小説家になりたいというのは、十代前半からの夢でしたけど、いざ現実のこととなると、ずいぶんと心細い気持ちがしました。

そんなわけで、心の中に5%(消費税分?)くらいしかなかった希望を増やすべく、書き始めたのが『幻想郵便局』です。この不安をひとときでも忘れられる面白い小説。読んだら元気になる小説。これが“希望増幅器”である『幻想郵便局』の執筆目的で、この物語を必要とする最初の読者は、わたし・堀川アサコでした。


ところで、ちょっと話がかわりますが。

本当だったのか今となっては自信がないのですけど、幽霊みたいなものを見たり出来た時期があった……気がします。

そういう場合、黙って見なかったふりなどするべきなのでしょうに、わたしは子どもみたいにマジマジマジッと見つめたり、ついつい「天井に顔が見えたー! 顔だけー!」と騒いだりしていました。仮に相手が生きている人だった場合、これは全く無礼千万な態度ですよね。幽霊か……または何か正体がわからない相手だったとしても、やはり面食らうような態度にちがいないですよね。そんな具合に、わたしがあんまりトンチキだから、むこうも祟る気すら失せたのでは? と、今となっては思います。

でも、こんな奇妙な体験をすることは、いつの間にかなくなりました。年齢のせいなのか、ようやく希望の仕事に就けて幽霊さんたちに世話をやかれなくてよくなったのか、あるいは一切が気のせいだったのか。

斯くして、今わたしは、天井に顔が見えたりしない部屋で『幻想郵便局』を読み返し、それに続く物語を書いています。それでも、ときたま──「よぉし、この調子ー!」なんて心の中でバンザイすると、「カツン」と部屋の空気が鳴ったりします。


あなたと何かを「同期」させる物語――解説 仁木英之

「おそらく似たような時期に、私も『幻想郵便局』と似た部分を持つ物語を書いていました。この物語と同じく、彼岸と此岸の間にあるものを描いています。そこにいる人たちの役割まで似ています。なのに、その印象は全く違う。<中略>もちろん、自分が描いた物語世界についてはこれが最善だと思っているわけですが、ちょっと羨ましくなってしまいました。こちらの世界も楽しそう、と指を咥えたことを告白します。<中略>『幻想郵便局』、それは堀川アサコという稀有な作家が、物語を通じてあなたを何かと「同期」させる物語なのかもしれません。」(仁木英之 解説より抜粋)

感想御礼

最後のミステリーの真相に驚きました!(20代女性)

割と遅読な私が速読してしまうほど、軽快なリズムの内容。この物語はまさに痛快ホラーファンタジー!(30代 男性)

笑いあり、涙ありで、本当に楽しく読みました。(40代 女性)

あっという間に読んじゃいました!(10代 男性)

本当におもしろかったです。特に全体に漂うシュールな雰囲気が大好きで、心地よく引き込まれました。(20代 男性)

あの世とこの世のあいだの地獄の一丁目で、あの世とこの世をつないでいる郵便局。人の良さそうなおじいさんや、オネエことばのおじさんなど、キャラが立っているし面白いしですいすいと読めてしまう。なのに読みおわると何かが心に残る不思議な物語でした。(ジュンク堂書店池袋店 小海裕美氏)

私も登天郵便局に行ってみたくなりました。人、幽霊、神様、みんなまとめて大騒動。最後のページをめくった時、ほっとあたたかい気持ちになりました。(紀伊國屋書店 横浜みなとみらい店 安田有希氏)

黄泉の国というとおそろしい感じがしますが、あっちの世界とこっちの世界をつなぐこんなにもハートフルなストーリーができあがるなんて、さすが堀川さんです!(ジュンク堂書店大阪本店 一柳友希氏)

とても怖い怪談なのに、とても優しくてあったかい。かつてない読後感を味わいました。(八重洲ブックセンター 内田俊明氏)


堀川アサコ(ほりかわ・あさこ)
1964年、青森県生まれ。2006年『闇鏡』で第18回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞しデビュー。その後『たましくる―—イタコ千歳のあやかし事件帖』『魔所――イタコ千歳のあやかし事件帖<2>』(ともに新潮社)を刊行。2011年に本書『幻想郵便局』を刊行後、『月夜彦』『幻想電氣館』『日記堂ファンタジー』『芳一』(以上、講談社)を立て続けに発表している。