講談社BOOK倶楽部

『デッド・オア・アライヴ』

薬丸岳、竹吉優輔、高野史緒、横関大、遠藤武文、翔田寛、鏑木蓮

乱歩賞作家真剣競作!生き残るのは、誰だ。

テーマはDead or Alive[生死の危機]2013年9月7日12:00に主人公が帝国ホテルにいる短編ミステリーを執筆せよ。

最強書き下ろしアンソロジー! 乱歩賞作家7人が描く「天国と地獄」

『デッド・オア・アライヴ』
【著者】
薬丸岳/竹吉優輔/高野史緒/横関大/遠藤武文/翔田寛/鏑木蓮
定価:本体1,600円(税別)

購入する
薬丸岳『不惑』
結婚式のビデオ制作ディレクターをしている窪田には、十二年間眠りつづけている恋人がいる。そして今日行われるある結婚式で、窪田は復讐を企てていた。
竹吉優輔『イーストウッドに助けはこない』
学生時代にカタギの世界から足を踏み外し、非合法に近い金貸しの仕事を手伝うコージ。「その道」に入るきっかけとなった叔父を、仲間とリンチする羽目になるが。
高野史緒『悪魔的暗示』
1918年、帝国ホテルのシガー・ルーム。少年はアメリカのスパイたちの会話を耳にしていた。ロシア帝国崩壊で闇と消えた、ロマノフ王朝の秘宝の行方は。
横関大『クイズ&ドリーム』
ホテルにチェックインした川尻は、突然部屋を訪れたお面をかぶった男に「これからクイズを出し合い、それに答える。負けたほうがこのカプセルを飲む」というゲームを強制され……。
遠藤武文『平和への祈り』
帝国ホテルのエントランスでケサランパサランを見かけ、そのあとを追った作家・遠藤武文。日比谷公園の林の中で「我が名はミカエル」と名乗る天使と出会い……。
翔田寛『墓石の呼ぶ声』
帝国ホテルのロビーで倒れた雨宮勇吉という老人は、戦後ずっと9月に泊まりにくる常連だ。ホテルマンがあるとき聞いた、雨宮の過去と、墓石の秘密とは。
鏑木蓮『終章〜タイムオーバー〜』
ナノバブルと呼ばれる微細な気泡を水耕栽培に活かす事業を興し、37歳の女性社長として手腕を振るう日下凜子。 ある夜、一人で酒を飲んでいると身体をしびれが襲い……。

著者7人が集結!刊行記念、スペシャル座談会!

  • 今回は急なお願いにもかかわらず面白い作品を書いていただきありがとうございました。
    おかげさまで素晴らしい短編集になったと思っております。
  • 薬丸 正直なところ、いまばたばたしているので、乱歩賞作家っていうくくりがなければ、おそらく受けていないかなと。ただ企画を聞いて非常にいい企画だと思いまして。乱歩賞が50周年のときに『赤の謎』、『白の謎』、『青の謎』、『黒の謎』という受賞作家によるアンソロジーが出ているのですが、ぼくの二年前の受賞者まではこれに参加しているのかな。そのときに本当に自分がこういうのに携わりたかったなという思いがあって。
  • 今回、「デッド・オア・アライヴ」と帝国ホテルという二つのお題がありましたが、内容はすんなり決まりましたか?
  • 薬丸 そうですね。夏目シリーズでやろうというのは最初に決めていました。ちょうど同じ月に新作の長編が出るということもありましたし。
  • 竹吉 ぼくは最初、今年の乱歩賞贈呈式翌日(9月7日)の帝国ホテルというお題を聞いて、みんな「その日」を書いてくるのかなと思っていて、最初は自分(受賞者)が登場するように書いたりしていたんですよ。この1000万円どうやって使うのかとか。正直、この日の前日の帝国ホテルでいちばん浮かれていたり、ぴりぴりしていたのは自分だという思いもありまして。
  • ──そこから変わっていったんですね。
  • 竹吉 だめだしを受けまして。それで、その日私は二日酔いで目を覚ましたんですけれども、そうじゃない人は何をして過ごしていたんだろうなと、オリンピックのニュースを聞いたんじゃないか、とか、なるべく自分から離して行くことを考えました。
    今回、短編を書くの自体が初めてで、何度もだめだしを受けて、主人公の叔父の設定は初めから変わらなかったんですけど、ほかはほぼすべて、変えていきました。
  • 高野 私はネタがかぶらないことだけは自信がありました(笑)。最初にニコライ二世時代の帝国ホテルをどうやって書こうかと思ったときに、ちょうどその時代に作曲家のプロコフィエフが日本に滞在していたということがわかったんです。「ロミオとジュリエット」とかを作った有名な作曲家なんですが、彼は帝国ホテルに泊まったかもしれない、と思ったんですけれど、調べたらお金がなくて東京ステーションホテルでした。滞在中、日記を書いていたのが2007−8年に遺族が公開して、読めるようになったんです。
  • 横関 帝国ホテルとデッド・オア・アライヴという二つのお題があったので、ちょっと悩みました。皆さんどちらから考えました?
  • 鏑木 ぼくは生と死です。
  • 高野 私は場所ですね。
  • 竹吉 生と死から。
  • 翔田 ぼくは場所ですね。
  • 薬丸 ぼくは帝国ホテルですね。
  • 遠藤 ぼくはあんまりどっちも関係ないっていうか(笑)。
  • 横関 ぼくはデッド・オア・アライヴから考えちゃって行き詰まったので、いいや、帝国ホテルの中から出ないと決めたらすんなりいきました。あとはエンタメ色を強く打ち出そうと思って書きました。
  • 遠藤 乱歩賞贈呈式の翌日ということでストレートにそこから書いていったらああなっちゃったというか(笑)。普通に考えて一番思いつきやすいのは、ホテルの部屋で殺されているんだけどどうやったのかという密室トリックなんですけど、
  • ──そんなちゃんとしたのを考えたんですか?(笑)
  • 遠藤 でもホテル内での殺人はだめとなれば。あとは、短編はシリーズものしか書いていなかったのでそこから離れようと。でも正直、書き上げたときは編集者から「こんなのを求めているんじゃない!」と言われるかと思いました(笑)。
  • 翔田 皆さん苦労されたと思うんですが二つの条件があるというのが非常に難しくて、いくつかプランをたてたんですけどなかなかうまくいかなくて。現代の話が大勢を占めると思ったので、ぼくはあえて時代を少しずらそうと思ったときに、フランク・ロイド・ライトが作った古いホテルを思い出したんですね。名古屋の明治村にある、大谷石でできたものなんですが、そこから石屋さんを考えて。そこに以前に読んでいた墓葬の本のことが加わって少しずつできていったという感じですね。
  • 鏑木 同時進行で「小説現代」で医療ミステリを書いていまして、その世界にしようかなと思ったんです。医療現場というのは必ず生と死ですから。ただ病院を舞台で主人公の生と死を書くというのはなかなか難しいなと。それで人間が死を受け入れるはどういう段階があるのだろうということを書いてみようと思いました。
  • 薬丸 でも皆さん、枷があることで、本来の自分っていうか、そういうものに近いものがでてくるのかもしれないですよね。
  • 創作にあたって苦労されたことはありますか
  • 薬丸 ホテルの従業員を悪く書けないですよね。何かに荷担しているとか。そこがちょっときつかったですね。あと個人で取材に行ったんですけど一人でうろちょろしててすごく怪しくて。ちょうど結婚式やっていたんですけど、どう見ても怪しかった。スーツ着ていけばよかったです。
  • 横関 たぶん皆さんそうだと思うんですが、ぼく自腹を切って泊まってみたんです。
  • 一同 ええっ。
  • 横関 えっ、皆さんは泊まらなかったんですか。
  • 鏑木 ロケハンには行きました。
  • 高野 お茶だけ飲みました。
  • 竹吉 受賞者だったので一応、泊まりました。
  • ──実際に泊まってわかったことは?
  • 横関 う〜ん、ルームサービスのドンペリの値段がわかった。
  • ──注文したんですか?
  • 横関 それはさすがに。でもルームサービスの値段ってどんなにネットで調べても載っていないんですよ。実際に泊まらなきゃわからないというのが新鮮でした。
  • 鏑木 9月7日に実際に行ったときに、あちこち写真を撮っていたんですけど、その日外国人の方がすごく多くて、シャッター音に神経質だったりして苦労しました。何にもないところを撮っていたりして確かに怪しいですよね。
  • 薬丸 ぼくも廊下の棚の底を確認したり。
  • 鏑木 埃とかチェックしている人みたいですよね。
  • 竹吉 バイキングに何も言わずに入っていこうとしたら「なにか?」と言われて、「あ、知り合いが中にいるんです」というと、「あ、のぞくだけでしたら」と見せてもらえました。その場面はそのまま活かすことができました。
     あと今回、ヤクザを題材にしているので、ヤクザになりきろうと思って、両眉を剃ったんですよ。
  • 一同 わからない!(笑)。その役作りがわからない。
  • 薬丸 仕事どうしたの?
  • 竹吉 あ、描いて行きました。
  • ほかの方の作品を読んでみていかがでしたか?
  • 薬丸 お題があってもこんなに違うものなのかと驚きました。
  • 竹吉 自分はもっと変化球を磨かなければいけないと思いました。
  • 翔田 竹吉さんのは受賞作を読んでいたので、ぜんぜん違ってびっくりしました。こんなふうに違った切り口で描かれていて皆さん本当に力があるなと思いました。
  • 横関 高野さんのを読んで、もう驚きました。最初の一文を読んだだけで、これはすごい短編集になると思いました。
  • 高野 意外と、翔田さんと私が大正生まれの昔話という点でかぶっていたりしたんですけど、でも同じ食材を持ってきても料理人が違うとぜんぜん違う料理をするっいうのがアンソロジーの面白さですよね。
  • 鏑木 最初に顔ぶれを見て、この人はこのセンでくるかな、このセンはこの人、と考えたところで絶対読めないのは遠藤さんだなと思いました(笑)。すごく怖い人だなと改めて思いました。
  • 遠藤 翔田さんのを読んだときに、すごく真面目に書いてあってびっくりして。
  • 一同 当たり前でしょう!(笑)
  • 遠藤 いや、おれだって真面目には書いている!
  • 竹吉 「平和への祈り」はすべてフィクションですか? ケサランパサランは本当に見たとか?
  • 遠藤 贈呈式の日に日比谷公園を見たらイベントみたいのをやっていたから、もしあの通りだったとしても公園まで追いかけていけないんですよ。
  • 翔田 遠藤さんは聖書にすごくこだわりがあるんですね。
  • 遠藤 いやないです。たまたま同じ頃に出る長編のために聖書を読み込んでいたりしたので、それがあってああなっちゃった。両方読んだ人は絶対おれのことクリスチャンだと思うと思う。でもそもそもうちは神主の家系なんです(笑)。
  • 竹吉 お互いの作品をリンクさせるのは、どこまで書き込んだらいいのか。
  • 薬丸 難しいですよね。ぼくそこそこ書き込んだら全部「トル」って書いてあって悲しかった……。けっこう想像めぐらせながら書いたんですけど。
  • ──高野作品にサバ味噌が出てくるなんてことは過去一度もなかったのでは。
  • 竹吉 すみません。高野さんに書いていただいたので校正のとき、間違ってもサバ味噌は変えるなと言われました。まだ高野さんの再校は読んでいないんですけど。
  • ──読んだら感動しますよ。
  • 遠藤 たとえば事前に顔合わせして、こうしましょうと話し合うとだいぶ違うものになるのかも。
  • 薬丸 だけど僕は逆にお互いの顔が見えないから面白いなと。探り合いじゃないですけど、皆さんどんな感じでくるかな、とわからない中でそれを越えるようなものを書きたいと。だから全部打ち合わせしちゃうと違うかもしれないですね。

薬丸岳

やくまる・がく

1969年兵庫県生まれ。2005年『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞。著書に『刑事のまなざし』、『逃走』、『友罪』、『その鏡は嘘をつく』など。

竹吉優輔

たけよし・ゆうすけ

1980年茨城県生まれ。図書館の司書として働くかたわら小説執筆を続け、2013年『襲名犯』で第59回江戸川乱歩賞を受賞。

高野史緒

たかの・ふみお

1966年茨城県生まれ。1995年、日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作『ムジカ・マキーナ』でデビュー。2012年『カラマーゾフの妹』で第58回江戸川乱歩賞受賞。著書に『カント・アンジェリコ』、『赤い星』、『ヴェネツィアの恋人』など。

横関大

よこぜき・だい

1975年静岡県生まれ。2010年『再会』で第五十六回江戸川乱歩賞を受賞。著書に『グッバイ・ヒーロー』、『沈黙のエール』など。

遠藤武文

えんどう・たけふみ

1966年長野県生まれ。2009年『プリズン・トリック』で第55回江戸川乱歩賞を受賞。著書に『トリック・シアター』、『パワードスーツ』、『原罪』など。

翔田 寛

しょうだ・かん

1956年生まれ。2000年、「影踏み鬼」で小説推理新人賞を受賞しデビュー。2008年『誘拐児』で第54回江戸川乱歩賞を受賞。著書に『築地ファントムホテル』、「やわら侍・竜巻誠十郎」シリーズなど。

鏑木 蓮

かぶらぎ・れん

1961年京都府生まれ。2006年『東京ダモイ』で第52回江戸川乱歩賞を受賞。著書に『真友』、『京都西陣シェアハウス〜憎まれ天使・有村志穂』など。

  • 次はこういうお題でやってみたいというのはありますか?
  • 薬丸 講談社ですかね(笑)。講談社だったら、殺人が起きてもいいのでは。
  • 竹吉 私は、全員が大天使から命令を受けるっていうのを(笑)
  • 鏑木 土地というのも面白いんじゃないんですかね。ありがちですけど例えば小京都。松本とか金沢とか。旅情ミステリーじゃないんですけど。
  • 遠藤 小京都って面白いですね。けっこう全国に小京都ってあるじゃないですか。
  • 薬丸 駅とか町とかですれ違って、そこから展開するとか。
  • 鏑木 面白いですね。東京駅とか
  • 高野 今回ちょっと難しいかなと思ったのは、絶対正午っていうのですね。これを5分くらいずつずらすとか。あとはやっぱり江戸川乱歩をネタに。
  • 竹吉 江戸川乱歩空白の何日、みたいなのとか
  • 高野 失踪したとき何をしていたのか。あとやっぱりみんなそれぞれ『怪人二十面相』を書くとか。乱歩の作品をモチーフとして何かやってみるとか。
  • 鏑木 いいですね。全員『黄金仮面』とかね。
  • 遠藤 やっぱりみんな江戸川乱歩は読んでいるんですか?
  • 高野 子どものころから、インフラのようなものというか
  • 鏑木 そこにある乱歩というかね。
  • 遠藤 おれ実は、一冊もどころか一行も読んだことない。
  • ──そんなこと可能なんですか!? (笑)
  • 高野 そんなことトップシークレットじゃないですか!
  • 鏑木 一千万円、返せ、返すんだ! 
  • 遠藤 昔は副賞がシャーロック・ホームズ像だったじゃないですか。おれじつは乱歩像になってちょっとがっかりして。
  • 一同 なんで!?(悲鳴)
  • 遠藤 いやシャーロック・ホームズが好きだから。
  • 鏑木 シャーロック・ホームズはおかしいですやん。明智小五郎ならわかるけど。ちなみにうちの猫の名前は小五郎です。
  • 遠藤 シャーロキアンっているじゃないですか。シャーロキアンがいろいろ欲しいものがあっても、手に入らないものがある、それは乱歩賞を獲った時のブロンズ像だ、というのを子どものころに知って、ああいつかそのブロンズ像を手に入れてみたいなと。でも実際に受賞してみたら、「乱歩じゃん!」って
  • 一同 ひどい! 乱歩賞剥奪!
  • 竹吉 みなさんは乱歩像をどうされていますか?
  • 高野 実家の床の間に置いてある。
  • 竹吉 なんか書くところに置くと、先生に監視されているようで…
  • 翔田 家の本棚に
  • ──遠藤さんは床の間?
  • 遠藤 大丈夫! 箱に入れてしまってある!
  • 鏑木 箱あけたらないねん(笑)
  • ──前代未聞の流出事件! でもあれ名前書いてありますよね。
  • 遠藤 名前は入れ替えるから(笑)。鏑木蓮にしとこう。
  • 鏑木 こらこら
  • では最後にメッセージ、エールなどお願いします。
  • 竹吉 図書館で働いていることもあって、私にとって皆さんというのは、先生方、というか本当に憧れの存在だったんですね。今日こうしてご一緒しましたけれども、こうして触れ合っても、やはり私にとっては一生の先生であり、一緒に執筆できたことを本当に誇りに思います。これを機に未来の少年少女たちが乱歩賞をとってあんな本に参加したいと思ってもらえるようにと思います。『デッド・オア・アライヴ』は、自分の作品を含めて面白い作品だという自負がありますので、読者の方に手にとってほしいと心から思います。
  • 横関 こんなに頼もしくてそれでいて対抗心をくすぐられたり、燃やしたくなるメンバーってあんまりないと思うんです。この7人のメンバーってものすごく頼もしい仲間であると同時にものすごい緊張感のあるライバルだと思っています。だから今日こういう場に来ることができてものすごく光栄に思っています。これからもお互いにがんばって行けたらと思います。 読者の皆さんには7人がまったく違う作品を書き上げているところを楽しんでいただけたらと思います。
  • 薬丸 作家というのは普段、基本的に一人で部屋の中で書いて、もちろん編集者の力も借りながら、一人で戦っているわけですね。なんだかんだ言いつつ、お互いギラギラ、メラメラと「ぜってー負けたくない」っていう気持ちでみなさんいると思うんですが、そういう中でこういった形でご一緒できて、僕自身すごく大きな刺激になりました。やっぱり乱歩賞作家になりたいなと思ってもらえるよう、ぼくもこれからがんばっていかなければならないなと思いましたし、皆さんと競作できてお会いしてお話できて本当にいい経験になりました。ありがとうございます。
  • 高野 私は作家としてというよりもアンソロジーを作る側の目線に立ってしまって、あんな企画も面白い、こんな企画も面白いと妄想が膨らんでいるところなんですけれども、今回みたいにテーマに縛りがあると、却って個性が出てくる。テーマをどう解釈するかというところですでに個性が出てくる。乱歩賞っていうくくりでのアンソロジーはとても面白いと思いました。これからもこういう企画があるときに、またその中に選んでいただけるようがんばります。
  • 遠藤 乱歩賞を盛り上げるということに関しては、受賞した人間がいいものを書いていくしかないと思うんですね。乱歩賞を受賞したあいつがこんなものを書いているんだからこの賞はすごいと思ってもらわないといけないと思うんです。私も先週、あるパーティで来年四作だすと公言してしまったんで、いまどうやって四作だそうか考えているんですけど(笑)、でもそのくらい精力的にやっていきたいと思っています。
  • 翔田 アンソロジーはその構成上短編の集まりになります。いま長編が主流の時代になってきて、非常に短い中に物語の楽しさとか面白さとか、あるいは最後にひっくりかえる爽快感とかがぎゅっと凝縮された、いい短編というのは、なかなか手に入らないような時代になってきています。そういう中で今回のアンソロジーは、こうしてお題を決めて、一騎当千の皆さんが果敢に挑戦されている。手に取った人はいろいろな食事を少しずつ食べるような楽しさを、感じることができるんじゃないかな、と思います。
  • 鏑木 実は乱歩賞に応募する勇気すら持てなかった時代があります。歴代の受賞者の顔ぶれ、作品に恐れおののいていたんです。その背中をしてくださったのも乱歩賞作家、今は亡き藤原伊織さんでした。乱歩に憧れ、乱歩賞に畏怖の念を抱き続けてやっと射止めた賞ですから、思い入れが強いんです。もう情念だといっていいくらい。ここに集った皆さんも同じように、それぞれの思いがあり、ミステリーのとらえ方も7色。そして、乱歩賞作家の活躍を耳すれば誇りに思い、自らも頑張らねばと鼓舞できる7人です。そんな作家の競演『デッド・オア・アライヴ』、絶対に損はさせません。
  • ──皆さんどうもありがとうございました。