平世(へいせい)22年──すべての探偵行為が禁止された日本。空閑純(そらしず・じゅん)は、17歳。両親ともに有名な探偵だが、母の朱鷺子(ときこ)は4年前から行方不明。父の誠(まこと)は昨年、警察類似行為で逮捕され、収監されている。純は伯父の住む大阪で一人暮らしをはじめる。母の行方の手がかりを探すなか、父母に仕事を仲介していた押井照雅(おしいてるまさ)という人物と会える機会が訪れる。数日後、押井の別邸で水に満たされた木箱に入った溺死体が発見された。被害者は元探偵で〈金魚〉と呼ばれていた男だった。容疑者リストに入った純は、自ら「水の棺」の謎を解くために調査をはじめる。純は探偵としての一歩を踏み出せるのか?
新しいシリーズ、始めました。
『闇の喇叭』は、ヤングアダルト向けレーベル〈ミステリーYA!〉の1冊として去年の6月に発表したものです。解決しない大きな問題を残しながら終わるのですが、「これも小説の一つの終わり方」と思っていました。
が、しかし、17歳のヒロイン、ソラこと空閑純のことが気になって、「あの後、どうなったんだろう?」「今はどうしている?」と考えているうちに、彼女の声が聞こえてくるようになりました。
わたしのことを書いて。
登場人物にそんなことを言われたのは、生まれて初めてです。どんな小説にしたらいいのかわからないまま、担当編集者だったMさんに「続きが書きたい」と伝え、理論社の了解も得たのですが――。
理論社側にそれが不可能になる事情が生じてしまいます。がっくりきましたが、講談社から発表の場を与えられることになり、感謝するとともに、作家デビューの直後からお世話になっているホームグラウンドで新シリーズを始められることを喜んでいます。
そうして書き上げたのが『真夜中の探偵』です。物語は、まだ始まったばかり。純‐ソラの前には、まだ長く険しい道が伸びています。
わたしのことを書いて。
もう彼女はそんなことを言いません。わたしが書くことがわかったからでしょう。
内容についてはここでは触れませんが、「どんな小説だろう?」と手に取ってみてください。
作家としてのわたしが今いるところは、「ここ」です。