『Aではない君と』
著者:薬丸岳
定価:本体1,500円(税別)
薬丸岳(やくまる・がく)
1969年兵庫県明石市生まれ。駒澤大学高等学校卒業。 2005年『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。 主著に『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』の夏目シリーズ、『友罪』『神の子』『誓約』『アノニマス・コール』などがある。
コメンテーターが少年犯罪について語る時、親は何をしていたんだ、周囲はなぜ気づかなかったんだ、学校はどう責任をとるんだ、と言います。ぼくもテレビを見て、なんとなく同調していました。そうだよな、もし自分に子供がいたとしても、人殺しをするまで気づかないなんてことはないだろう、と。
しかし、万に一つ、自分の子供が少年Aとなってしまったら、どうするのだろうかと、薬丸さんはパンドラの箱を開けました。苦しみ、悩み、書いては消し、また悩み、と繰り返しながら少しずつ積み上げられていく原稿を読み、背筋が寒くなりました。
これまで自分は、どこか遠い世界のことだと思って、目を背けていたのだと知りました。子供が罪を犯すこと、その親のことについて、まったく考えられていませんでした。
この小説は、もしかすると、犯罪を減らすことができるのではないか。
そう思わされるほど、強く鋭い小説です。
すべての人に読んでほしい、心からそう思います。どうか、ぜひ。
(文芸第二出版部 鍜治)